2009年5月28日木曜日

天声人語

昨日の朝、親父に手渡され読めと言われた朝日新聞
色々考えさせられた

5月27日付け天声人語より
「オール1の落ちこぼれ」を経験した高校教諭、宮本延春(まさはる)さん(40)は、九九を言えぬまま中学を出た。人生を変えたのは、23歳で女友達に借りたアインシュタインのビデオだと自著にある。物理にあこがれ一念発起、定時制高校で猛勉強し、名古屋大に進んだ▼「どん底にいても、夢を捨てなければ幸せになるチャンスが来る」が持論だ。小3の算数ドリルからのやり直しを励ました恋人や、親身の補習で受験勉強を支えた定時制の先生たち。目標へとひた走る者には、しばしば「運命の出会い」が訪れる▼中央大教授を刺殺したとして逮捕された山本竜太容疑者(28)は、はるかに順調な青春である。夢もあった。しかし、熱心な指導教官との出会いは生きず、同じ23歳が「負の回路」への入り口となった▼社会に出れば、思い通りにならないことが多い。「一身上の都合」による転職もあろう。そうした壁に容疑者は背を向けたかに見える。らせん階段の暗がりを引き返し、入り口にいた恩師を恨みで突いた。これでは幸せもノックのしようがない▼「オール1先生」は
、若者に「つらいと思ったら成長の途中と前向きにとらえ、壁を乗り越えて」と訴える。宮本さんの強さは本物だが、山本容疑者が並外れて弱いかといえば、どうだろう▼事件が法廷に移れば、審理に裁判員が加わる。容疑者が「今は話したくない」という動機が、情状や量刑を左右しよう。やり直せる20代で暴発した「自己都合」とは何なのか。選ばれた都民は、誰もが秘める弱さをプロと共に裁くことになる。